下痢のみられる病気
小腸および大腸性下痢の症状による識別
症状 | 小腸 | 大腸 |
---|---|---|
糞便の症状 量 粘液 血液 未消化物 |
増加(3倍以上) まれ 黒色 存在 |
正常または増加(1~3倍) 存在 鮮血 認められない |
排便の状況 回数 しぶり 痛み |
健常時の2~3倍 なし なし |
健常時の3倍以上 あり 結腸、直腸障害時にみられる |
嘔吐 | 炎症性の時認められる (食事摂取と関連してあらわれる) |
大腸炎の30%に認められる (食事摂取と関係なくみられる) |
その他 体重の減少 栄養状態への影響 |
時に認められる 重大(電解質バランス、低たんぱく血症) |
まれ 小さい |
下痢を起こす代表的な腸の病気
①ウイルス性腸炎
- パルボウイルス感染症はとくに幼若動物で問題になり、発症すると重篤になりやすい怖い感染症です。ワクチン接種により発生は少なくなっていますが、依然仔犬が多く集まる場所ではしばしば発生して問題になっています。 コロナウイルス感染症は単独感染での死亡率は極めて低いものの、他のウイルスや寄生虫、細菌などと混合感染すると重篤になる可能性があります。
- コロナウイルス感染症は単独感染での死亡率は極めて低いものの、他のウイルスや寄生虫、細菌などと混合感染すると重篤になる可能性があります。
②細菌性腸炎
- クロストリジウム性腸炎はClostridium Perfringens A型が産生する毒素により腸が障害をうけるもので急性、出血性の大腸炎を引き起こします。
- カンピロバクター性腸炎はカンピロバクターが腸上皮に侵入して毒素を産生することにより引き起こされます。症状は急性の粘液便や鮮血便などが認められることが多いです。
以上、2菌種は大腸炎の原因として比較的多くみられる細菌です。糞便の顕微鏡検査で判別つくことが多くあります。
③炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは胃・小腸・大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こして、慢性の消化器症状をしめす病気です。腸粘膜での免疫異常により引き起こされるものではないかと考えられています。適切な食事管理や投薬が生涯にわたって必要になることも少なくありません。
④腸リンパ管拡張症
腸粘膜、粘膜下織、腸間膜のリンパ管が異常に拡張してしまう病気です。蛋白質が腸管から漏れ出してしまい、悪化するとお腹に腹水などが貯まります。上記、炎症性腸疾患や腫瘍から続発することもあり生涯を通じての治療管理が必要になることが多いです。
⑤大腸炎
大腸炎による下痢はしばしば食事性、ストレス性にみられ、ときに寄生虫などの感染によっても発症します。通常は頻回の排便を特徴とし、粘液や血液を含む少量の便の排泄、しぶり等がみられます。嘔吐も大腸炎の30%でみられます。